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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)1691号 判決

控訴人

東京高等検察庁検事長

補助参加人

川本幸子

被控訴人

山田令子

右法定代理人親権者母

山田正子

主文

本件控訴を却下する。

控訴費用は補助参加人の負担とする。

事実及び理由

控訴人の補助参加人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。」との判決を求める旨の控訴状を提出した。

本件記録によれば、原判決が昭和五〇年六月二五日言渡され、控訴人(検察官)に同年同月二六日送達されたこと、補助参加人が控訴状を原審に提出したのは同年七月一一日であることが、いずれも明らかである。

本件のような認知の訴えについて言い渡した判決は身分関係の画一的確定の必要から第三者に対してもその効力を有するもの(人事訴訟手続法三二条一項一八条一項)であるから、この場合利害関係人として訴訟に参加した者は補助参加人といつても補助参加人の訴訟行為に関する民事訴訟法六九条二項及び同法七〇条の適用を受ける余地なく、むしろ被参加人と参加人との間にはいわゆる必要的共同訴訟に関する同法六二条が準用され、共同訴訟人と同様の訴訟行為をすることのできる地位(いわゆる共同訴訟的補助参加人の地位)を有するものと解し、補助参加人の控訴期間は被参加人の控訴期間に限られないとする見解がある(東京高等裁判所第一民事部昭和四九年七月二九日判決高等裁判所民事判例集二七巻三号二九七頁以下参照。)けれども、そのように判決の効力が第三者に及ぶ訴訟であつても、補助参加人のすべてが共同訴訟的補助参加人の地位を取得するものではなく、その地位を取得するには、単に法律上の利害関係があるというだけでは足らず、訴訟の結果によつてその権利を害されるものでなければならないと解せられる。ところで、職権で調査すると、本件補助参加人は、本件死後認知事件において生父とされている者の遺妻(いわゆる本妻)であつて、他に共同相続人として養子が居り、本件訴訟の結果により、相続分に影響をうけないことはもとより、権利を害される者には該らないと認められる。したがつて、本件補助参加人は、共同訴訟的補助参加人であるとは言い難い。すると、補助参加人の右判決に対する控訴期間は、控訴人の控訴期間と同一であるから、右控訴期間は昭和五〇年七月一〇日を以て満了すべきものである。

しかるに、本件控訴は控訴人が原判決の送達を受けてから二週間の控訴期間の経過した後に提起された不適法なものであつて、その欠缺はこれを補正することができない。〈以下省略〉

(菅野啓蔵 舘忠彦 安井章)

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